小児医療連載コラム “いざというときにあせらない”こどもの病気とケア
今日は乳児健診で必ず確認する股関節脱臼の有無についてお話します。
一般的に乳児健診での股関節脱臼の有無の確認は、「開排制限の有無」で行います。
開排制限の有無とは、赤ちゃんを仰向けにして股関節を曲げて膝をかかえるような格好をさせ、そこから股関節を左右に開いたときに床すれすれまで股関節が開くかどうかをチェックし、床から20度以上の高さまでしか股関節が開かないときに開排制限あり、すなわち股関節脱臼の疑いありと判定します。
しかし、最近問題になっていることが、乳児健診で開排制限の有無を確認したにもかかわらず、股関節脱臼が見落とされてしまうケースです。
開排制限というのは、基本的に左右差をみる検査です。
両側が脱臼して左右差がなかったり、片側が脱臼しているお子さんが検査時に啼泣してしまって力がはいってしまうと、「まあ、大丈夫でしょう」と経過観察になってしまう場合があるのです。
僕はずっと、股関節が脱臼していると歩けないと思っていたのですが、なんと歩くことができるのです。
股関節脱臼のセミナーで動画を見せてもらいましたが、変なよちよち歩きで歩くのです。
股関節脱臼は歩く前に判明すれば装具をつけて治すことができますが、歩いてしまうと手術をしないと治すことができません。
そのため、なるべく見落としがないように小児の整形外科医が考えたチェック表が以下です。
1)股関節の開き方が不十分
2)女の子
3)家族に股関節の悪い人がいる
4)逆子で生まれた
5)太ももや足の付け根のしわの位置や数が左右非対称
の5つの項目のうち、2つが当てはまった時点で専門医に紹介することとしています。
当院では4ヵ月、7ヵ月健診時に上記チェック表を渡し、2つ以上当てはまった場合には股関節エコーを施行して脱臼の有無を判断しています。
生後10ヵ月になると大腿骨頭の骨化が進み、股関節エコーをしてもよくわからなくなってしまうので、10ヵ月健診では行っていません。
生後半年までのお子さんで上記5つのうち2つが当てはまる場合、当てはまらなくてもご心配な場合は当院で股関節エコーを施行しますので、いつでもご相談ください。
股関節脱臼は常に足を広げるようにすることで予防することができますし、反対にスリングやおくるみなどで足をそろえる時間が長くなると脱臼を促してしまうこともあります。
授乳するときは縦抱きにするなど、普段から可能な範囲で股関節を開いた格好をとらせるように心がけて、股関節脱臼を予防しましょう。
医療法人社団育心会
やまだこどもクリニック
院長 山田慎一
https://www.yamadakodomo-clinic.com/
※2020年7月24日掲載
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。