小児医療連載コラム “いざというときにあせらない”こどもの病気とケア
第6回 「最新予防接種事情2020 ~任意の予防接種は打たなくてもよい?~」
「任意の予防接種」というのは「打つのか打たないのかを任意に決める予防接種」という意味であり、無料で接種できる公費の予防接種とは異なりお金がかかります。
「それじゃあ、接種しなくてもいい?」のかというと、そういうわけではありません。
現在任意の予防接種は、生後6週から接種できるロタワクチンや、1歳以降に接種できるおたふく風邪のワクチンなどがありますが、いずれも接種した方がよいワクチンであるといえます。
(ちなみにロタワクチンは2020年10月から公費での接種が開始となります。)
おたふく風邪のワクチンは1989年にMMRワクチン(麻疹風疹ワクチンにおたふく風邪ワクチンを混ぜたもの)として公費で始まりましたが、副反応の無菌性髄膜炎が社会的問題となったため、1993年に中止となりました。
おたふく風邪にかかると1%程度の確率で無菌性髄膜炎になる可能性があるのですが、MMRワクチンを開始したら無菌性髄膜炎になる人が増えてきてしまったように見えたので中止したわけです。
現在ではおたふく風邪ワクチンを接種することにより無菌性髄膜炎の頻度が高くなることはないとわかっていますが、未だに任意の予防接種となっています。
(公費となると多額の税金がかかるので、そのあたりも関係がありそうです。)
おたふく風邪の自然感染による合併症でもっとも問題となるのは難聴です。
0.1-0.5%ぐらいの頻度と言われていますが、おたふく風邪の難聴は現在医学でも治すことはできません。
2015-2016年の2年間で少なくとも348人がおたふく風邪が原因で難聴になったことが報告されました。
任意の予防接種だからとおたふく風邪の予防接種をしなかったらお子さんがおたふく風邪にかかって難聴になってしまった、なんて考えたらぞっとしませんか?
1歳を過ぎたら必ず接種するようにしましょう。
もう一つ、積極的に接種した方がよい任意の予防接種に年長さんと6年生で接種する3種混合ワクチンがあります。
3種混合ワクチンは百日咳、ジフテリア、破傷風のワクチンであり、これにポリオを足した4種混合ワクチンが現在公費で接種されています。
今巷で問題になっているのが、小学生以上で百日咳にかかるお子さんが増えていることです。
3種混合も4種混合も公費では1歳前に3回、1歳で1回追加接種をして終了となるのですが、それだけでは小学生になる頃にワクチンの効果が切れてしまい、百日咳にかかる子がいるのです。
諸外国では年長さんで1回、6年生で1回、公費で追加接種している国が多いのですが、日本では追加接種をする場合には任意となります。
6年生になると2種混合が公費で接種できますが、これはジフテリアと破傷風のワクチンであり、百日咳は入っていません。
百日咳をしっかりと予防するために、年長さんで1回、6年生で2種混合ワクチンは接種せずに3種混合ワクチンを接種することをお勧めします。
医療法人社団育心会
やまだこどもクリニック
院長 山田慎一
https://www.yamadakodomo-clinic.com/
※2020年5月8日掲載
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。