小児医療連載コラム “いざというときにあせらない”こどもの病気とケア
第12回 「“おねしょ”と“夜尿症”って何が違うの?」
赤ん坊は誰でもおねしょをします。
通常はおむつがとれて3-4歳頃になると自然とおねしょをしなくなりますが、5歳になってもおねしょをしている場合、「夜尿症」という病名がつきます。
治療をしてもよい病気、ということですね。
お子さんが小学生になって夜尿症を治したいと思ったら、まず確認すべきことが2つあります。
1つは「便秘」です。
便秘があると直腸の前にある膀胱が常に便塊で圧迫されている状態になり、膀胱容量が減ってしまうため、なかなか夜尿症が改善しません。便秘かどうかは便性によって確認します。
毎日排便があっても少しずつ硬便が出る場合、それはひどい便秘である可能性が高いです。
もう1つは「昼間遺尿」といって日中におしっこを漏らしてしまうことがある場合です。
昼間遺尿がある場合は、まずそちらから治さないと夜尿症が治りません。
便秘、昼間遺尿の治療に関しては、当院にご相談ください。
上記の2つがなく、夜尿症の治療を希望される場合、当院を受診していただきたいのですが、今は新型コロナウイルスなどもあり、すぐには受診できない場合もあるかと思います。
その場合、まず自宅でやっていただきたいことがあります。
それは「水分制限」です。
夕食時から水分を少なめにし、夕食後は水分を飲んではいけません。
お風呂あがりにのどが乾いたら氷1個しゃぶって頑張ります。
夏は夜でも汗をかくと脱水の心配がありますが、基本的に日中しっかりと水分を摂取しておけば問題ありません。
小学1,2年生で夜尿症がある場合、「夜尿症は治したいけど水も飲みたい!」というのが本音だと思いますが、水分制限ができないと治療をしましょうという話になりません。
小学校に入っても夜尿症が治らない時、親御さんはあせっている場合が多いのですが、お子さんはそれほど気にしていない場合もあります。
そういうお子さんは治療が時期尚早であるため、無理に水分制限を強いることはやめましょう。
夜尿症は本人が悪いことは何一つありませんので、夜尿症で本人を叱ることはしないようにしましょう。
自宅でしっかりと水分制限ができ、それでも夜尿症が改善しない場合は当院を受診してください。
現在、夜尿症の治療は2本柱となっています。
1つは「抗利尿ホルモン剤を飲む」です。
人間が夜間睡眠時にトイレに行かなくていいのは、熟睡すると脳下垂体から抗利尿ホルモンが分泌されて尿を濃縮して尿量が減るからです。
夜間起こしてトイレに行かせるという行為は、その日だけおねしょをしなければよいという時は有効ですが、長い目で見た場合には夜尿症を治すということと反対のことをしていますので、夜尿症を治したいなら夜起こすのはやめましょう。
一般的に夜尿症があるお子さんは抗利尿ホルモンの分泌が悪い可能性があるので、抗利尿ホルモン剤を飲むというのが第一選択となります。
もう1つは「アラーム療法」です。
導線が入っているパットをつけて寝て、おねしょをしたらアラームが鳴るので親御さんが本人をたたき起こす治療法です。
おねしょをしている最中に起こされると、急に排尿が止まることになります。
それが膀胱容量を増やしたり、尿道括約筋を鍛えることになり、夜尿症が治るのです。
いずれの治療法も夜尿症診療ガイドラインで推奨されている方法であり、どちらを最初に選択して治療するかは相談して決めることになります。
夜尿症は何もしなくても毎年15%程度のお子さんが自然治癒しますが、夜尿症があると自己肯定感が低く、日常生活にも少なからず影響を与えることがわかってきました。
小学校に入っても夜尿症が治らず、本人が治したいと強く思っている場合はご相談ください。
医療法人社団育心会
やまだこどもクリニック
院長 山田慎一
https://www.yamadakodomo-clinic.com/
※2020年6月19日掲載
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。